物置を検討していると、「イナバは組みやすい」「ヨドは組みにくい」といった話をよく見かけます。

ところが、現場で20年組み立ててきた立場から言うと、この問いはそのままでは答えられません。

理由は単純です。同じメーカーでも、物置の大きさによって組みやすさが逆転するからです。

まず知っておきたい、物置の「2つの区分」

物置は(車庫やガレージを除くと)、どのメーカーのものも「小型(収納庫)」と「中型・大型」の2種類に分かれます。

呼び方はメーカーごとに違いますが、この2区分はどのメーカーにもあります。

Fig. 01 — 機種の区分

物置は「小型(収納庫)」と「中型・大型」に分かれます

小型(収納庫)
中型・大型
ヨドコウ
エスモ/ブラックエスモ
エルモ/ブラックエルモ/エルモコンビ/エルモシャッター
イナバ
シンプリー/アイビーストッカー
フォルタ(プラス/大型/ウィズ)/ドマール
タクボ
グランプレステージ/リジュー/ペインタ
Mr.ストックマン ダンディ/Mr.トールマン ダンディ/BELOS

比べるのは、たての列(同じ区分)の中どうしです。 よこの行(メーカー)でまとめると、この記事で書いている逆転が見えなくなります。車庫・ガレージ・バイク保管庫と、断熱タイプは、この表には入れていません。

ここで少しややこしいのがイナバです。

ヨドコウとタクボは公式サイトでも「小型物置」「中・大型物置」とカテゴリが分かれています。一方でイナバは、公式サイトで小型と中型をひとまとめに表記していて、区分が見えにくくなっています。

「イナバは〜」とメーカー全体で一括りに語られやすいのは、この分かりにくさも一因かもしれません。

だから物置の話をするときは、「イナバは」「ヨドは」ではなく、「イナバの小型は」「ヨドの中型・大型は」と、区分とセットで見ていく必要があります。

中型・大型で見ると、いま組みやすいのは

中型・大型の物置に絞って比べると、現行のエルモ(ヨドコウ)は、フォルタ(イナバ)より組みやすいというのが、実際に組んできた実感です。ここは、はっきりそう言えます。

ヨドコウは、以前は組みにくいと言われていました。ここで言う「以前」は、目安として10年ほど前です。

それが変わった一番の理由は、手の届きにくい場所や、工具の入りにくい場所のネジ止めが減ったことです。無理な姿勢でのネジ留めが少なくなると、それだけで組み立て全体の負担がぐっと下がります。

ただし、ここは少し細かい注意が要ります。「エルモになって組みやすくなった」と一括りにはできません。

エルモの初期型(LMC)は癖が強く、施工の難度は高いものでした。それが改良版のLMD以降で組みやすくなった、という経緯があります。同じ「エルモ」でも、型番(LMC→LMD)でモデルチェンジがあり、そこで手間が変わっているのです。これは中型・大型での話です。

一方のイナバの中型・大型は、逆の動きをしました。

かつての「ネクスタ」から現行の「フォルタ」に変わったタイミングで、組み立ての工程が大幅に増えています。「イナバの大型は昔より手間がかかるようになった」という声の中身は、この機種の切り替えによるものです。

なお、ネット上で見かける「ネクスタ」はすでに廃盤で、現行はフォルタです。古い機種名のまま情報が出回っていることがあります。

小型では、逆になります

ところが、同じ2社を小型(収納庫)で比べると、評価がひっくり返ります。

小型では、シンプリー(イナバ)のほうが、エスモ(ヨドコウ)より遥かに組み立てやすいのです。

中型・大型ではエルモ(ヨド)に軍配が上がったのに、小型ではシンプリー(イナバ)が大きく上回ります。

だからこそ、「イナバは組みやすい」「ヨドは組みにくい」というメーカー単位の言い方は成り立ちません。同じメーカーの中で、小型と中型・大型で組みやすさが逆転しているからです。

「どのメーカーが組みやすいか」という問いそのものが、区分を抜きにしては答えられない。これがこの記事でいちばんお伝えしたいことです。

扉や、組み立ての人数について

よく話題になる点にも触れておきます。

扉の開閉については、「イナバは重い、ヨド・タクボは軽い」と説明されることがあります。実際には極端な差はありません。ただし、大型の物置に限れば、概ねその通りという感覚です。

組み立ての人数は、「屋根の取り付けは2人推奨」とよく言われます。ですが、実際には屋根だけの話ではありません。

本体の組み立てそのものが、2人での作業に向いています。1人で進めるのは、屋根に限らず全体を通して無理が出やすいところです。

では、何を基準に選べばいいのか

ひとつ、判断材料をお伝えします。

組み立てを業者に任せるなら、組みやすさはそもそも関係ありません。組む人は職人であって、あなたではないからです。

その場合に大きく違ってくるのは、むしろ棚の使い勝手です。物置は建てたあとに毎日使うものです。日々触れる棚の差は、組み立ての手間よりも長く付き合うことになります。

棚が具体的にどう違うかについては、機種ごとの差があるものの、ここで断定できるだけの整理がまだできていません。改めて別の記事で扱えればと思います。

まとめ:メーカー名だけでは判断できません

  • 物置は小型(収納庫)中型・大型の2区分。呼び方は違っても、どのメーカーにもこの区分がある
  • 中型・大型では、現行のエルモ(ヨドコウ)がフォルタ(イナバ)より組みやすい
  • 小型では逆で、シンプリー(イナバ)がエスモ(ヨドコウ)より遥かに組み立てやすい
  • 同じ2社が区分をまたぐと逆転する。メーカー名だけで組みやすさは判断できない
  • 扉の重さに極端な差はない。組み立ては屋根だけでなく、本体全体が2人向き
  • 業者に任せるなら組みやすさは関係ない。棚の使い勝手に目を向けるという見方もある

この10年で、組みやすくなった機種もあれば、組みにくくなった機種もあります。「昔の評判」と「メーカー名」だけでは、いまの実物とはズレます。

迷ったら、一度ご相談いただくこともできます。